研究課題
黄色ブドウ球菌はカテーテルや人工関節などの医療用デバイスの表面にバイオフィルムを形成し、難治性のバイオフィルム感染症の原因となる。我々は、バイオフィルム感染症に対する有効な治療薬・予防薬の開発を目指し、独自のスクリーニングシステムを構築して黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成を阻害する低分子化合物の大規模スクリーニングを行ってきた。ヒット化合物の一つであるABC-JK1は黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成に重要な細胞外多糖の産生を抑制し、細胞壁の肥厚化を誘導することが明らかになった。加えて、シトクロムaa3型酸化酵素であるqox遺伝子群の転写を誘導し、酸素呼吸を亢進させることで、プロトン駆動力依存的に作用するアミノグリコシド系抗菌薬に対する感受性を上昇させることが示された。次に、リンカー構造を持つ磁性ビーズの表面にABC-JK1の誘導体を共有結合で固定化し、プルダウン法による標的分子の同定を試みた。その結果、黄色ブドウ球菌の細胞壁分解に関与すると考えられるタンパク質と特異的に結合することが明らかになった。活性を持たない前駆体および変異体タンパク質との結合性は大きく低下したことから、本タンパク質の活性中心にABC-JK1が結合することが示唆された。本タンパク質の遺伝子欠損株は野生株と同等のバイオフィルム形成能を有し、そのバイオフィルム形成はABC-JK1によって阻害された。よって、本タンパク質との結合はABC-JK1によるバイオフィルム形成阻害に直接関与するものではないと考えられた。
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npj Biofilms and Microbiomes
巻: 3 ページ: 18
10.1038/s41522-017-0026-1