高齢化や高度医療化を迎えた先進諸国では、毒力の弱い病原体による日和見感染症を制御することが求められている。このような感染症の発症メカニズムの一つとして、宿主のバリアとして働くムチンで覆われた腸管上皮細胞層を越えて細菌が血液に移行するバクテリアルトランスロケーションの概念が提唱されている。本研究では、日和見感染症起因菌であるPseudomonas aeruginosa(緑膿菌)のトランスロケーション機構を調べ、上皮細胞が分泌するタンパク質を感知した緑膿菌は鞭毛運動が亢進し、ムチン層を透過することを明らかとした。本研究の成果は、日和見感染症の新たな予防および治療薬の考案につながると考えられる。
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