本研究課題では小児腎動態シンチグラフィ検査に代表されるダイナミック検査の投与量と画質の関係について,生理学的循環を考慮した腎動態模擬ファントムから把握し,投与量と画質を最適化することを目的としている.腎動態シンチグラフィの挙動把握が可能な既存の腎動態ファントムはないため,生理学的循環を考慮した腎動態シンチグラフィ解析用ファントムの作成を行い,腎動態シンチグラムを模擬するファントムを完成させた.放射線医薬品の薬剤動態は,循環上流側から挿入した放射線薬剤は心臓-大動脈-腎臓へ流れ,腎臓にて一定時間留まり,尿管,膀胱へ流出していくのが撮影画像にて確認できた.本年度は実際に放射能濃度が異なる99mTcの放射線同位元素をファントムに流し,得られた画像と放射能濃度との関係を調べた.試行錯誤の上で調整を行ったが,人体でみられる挙動よりも腎での薬剤貯留時間が短くなった.また,ファントムの性質上,ファントム内部の臓器からの水漏れがあり,放射性薬剤の腎以外への流出が認められ,これは最後まで解消できなかった.得られた画像は低い放射線濃度では、臨床において許容できる画質とは言えなかった。得られた画像から計算した腎臓の時間放射能曲線(レノグラム)の最初の腎血流を反映する急峻な上昇を示す模擬血流相の立ち上がりの傾きは注入した放射能濃度に関係なくおおむね変化がなかった。これはレノグラムから計算される各定量指標に与える影響が少ないことが示唆される。しかしながら、低放射能の投与量ではレノグラムカーブにノイズが増加し、このレノグラムにおけるノイズが定量指標に影響を及ぼす可能性も示唆された。
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