研究課題/領域番号 |
26860417
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
頼藤 貴志 岡山大学, その他の研究科, 准教授 (00452566)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | メチル水銀 / 水俣病 / 神経認知機能 / ADL評価 |
研究実績の概要 |
昨今、メチル水銀曝露の胎児への影響が注目されている。その上で、我が国が経験した水俣病からは有益な知見を提供できると考えられるが、まだ得られている知見は少ない。その為、胎児性水俣病患者がどのような臨床経過を辿っているか、胎児性水俣病患者よりも曝露量は少ないけれども、低~中程度に曝露された住民がどのような認知機能の障害を呈しているかを明らかにしていくため、平成27年度は、胎児性水俣病患者の臨床症状・所見の追跡、自覚症状の聞き取り、高次機能評価を行い、胎児性水俣病の方々の臨床所見のまとめを行うことができた。今後も、継続的に記録を残していく所存である。 その他、胎児期曝露の一環として、水俣地域での出生の性別の変動を評価した論文の執筆を行った。結果として、重度の曝露が起こっていた時には水俣地域やその周辺の地域で男児の出生が減少していた。 また、過去の資料を掘り起こし、過去の水俣地域(高濃度曝露地域)・御所浦地域(中濃度曝露地域)・有明地域(低濃度曝露地域)での大規模調査とメチル水銀の非曝露地域である伊根地域での調査とを連結して、神経学的所見の分布などを検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、胎児性水俣病患者の臨床症状・所見の追跡、自覚症状の聞き取り、高次機能評価を行って記録にまとめ、継時的な記録を残していくという予定であった。水俣市内の2つの施設を毎月訪問し、胎児性水俣病患者さんからの聞き取り及び検査を行っており、概ね順調に進んでいる。 よって、「おおむね順調」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、約20名の胎児性水俣病患者を対象とし、10年前と現在のADL(日常生活動作)を調査・比較することで、胎児性水俣病患者におけるADLの変遷を評価する。ADL評価としては、バーサル・インデックス(BI)、機能的自立度評価法(FIM)を用い、その他MMSE(ミニメンタルステート検査)、質問票を用いる予定である。また,臍帯メチル水銀濃度がわかる対象者の方においては、臍帯メチル水銀濃度とADLの関連・変遷の関連を評価する。被害を受けた方たちが実際どのような影響を受けているのか、症状がどのように変遷しているのかを描き出すことは、本人の今後の健康管理にも役に立ち、社会的にも意義があると思われる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
胎児性水俣病患者の評価と同時に、胎児期の低・中濃度メチル水銀曝露の神経認知機能の影響を検討したが、その際コントロール地域の20名に対して行う予定だった各種検査が、既に標準化された認知機能検査を用いることができ、不要となったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度には、約20名の胎児性水俣病患者を対象に、ADL(日常生活動作)変遷に関する研究を行う予定である。対象者には、約2時間を要する質問票への回答と各種検査に対するお礼として謝金をお渡しする。
|