研究実績の概要 |
水俣病患者の姿、特に胎児性水俣病患者の姿は、世界中の人々に環境を汚染することの怖さを訴えてきた。しかし、胎児性水俣病患者がどのような成人になり、元来有していた神経学的症状がどのように変遷し、また現在どのような健康問題を保有しているかはあまり知られていない。さまざまな汚染レベルが観察された水俣で、実際どのような影響があったのか評価し、その知見を世界に提供していくことは今後のメチル水銀対策にとって必要であると思われる。 胎児性水俣病患者を対象とし,10年前と現在のADL(日常生活動作)を調査・比較することで,胎児性水俣病患者におけるADLの変遷を評価することを目的とし、研究対象者または対象者にケアを提供する方への聞き取りにより,現在及び10年前のADL評価を行う。 当初計画としては、平成28年6月から、日常生活動作(ADL)調査として、バーサル・インデックス(BI),機能的自立度評価法(FIM)を開始する予定であったが、平成28年4月に発生した熊本地震の影響で、研究対象者及び、研究協力を得る予定であった研究機関や研究者が地震対応に追われ延期を余儀なくされた。 そのため、研究期間を6か月延長し、平成28年12月に調査を開始。収集したデータを基に評価解析し、成果を学術論文にまとめた。 結果として、11人の胎児性患者の現在と過去10年前のADLを評価したが、評価した二つのADLの指標(Barthel IndexとFunctional Independence Measure)とも低下傾向であった。地域における医療・福祉両面におけるサポートが必要だと考えられた。
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