近年、ヒ素曝露による循環器疾患の発症リスクが増大することが報告されている。そこで本研究では、循環器疾患のリスク要因の一である血中高密度リポタンパク質(HDL)の低下に着目した。HDLは肝臓のATP-binding cassette transporter-A1 (ABCA1)を介して主に産生されることから、肝臓由来の培養細胞を用いヒ素がABCA1の発現に及ぼす影響について解析を行った。その結果、ヒ素により、ABCA1の有意な発現抑制が認められたと同時に、細胞内コレステロールの蓄積が認められた。このことから、ヒ素曝露によるABCA1の発現抑制がコレステロール代謝の異常に関与することが示唆された。
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