研究実績の概要 |
2008年1月から2012年4月までに移植腎生検を行った腎移植患者を対象とし、Protocol biopsyでは移植腎生検決定時に血清が保存されているもの、episode biopsyでは14日以内に血清が保存されているものを使用した。明らかな感染症を併発するものは除外した。合計81名88サンプル。Cytometric Bead Array法(CBA)を用いて、それらの血清中のChemokine(CCL2, CXCL9, CXCL10, CCL5)を測定し、移植腎病理組織診断と血清中のChemokine濃度を比較検討した。急性細胞性拒絶反応のサンプルは19検体、非急性細胞性拒絶反応のサンプルは69検体で2群間の患者背景に有意差は認めなかった。CBAの結果、T細胞に発現しているCXCR3,CCR5のリガンドであるCXCL9, CXCL10, CCL5は非急性細胞性拒絶反応症例と比較し、急性細胞性拒絶反応症例において有意な上昇を示した。さらに、それらのケモカインのうち血清CXCL10濃度と急性細胞性拒絶反応との関係はROC下曲線面積が0.89であり、カットオフ値180.3pg/mlでは感度89.5%、特異度79.8%であった。以上から、CXCL10が急性細胞性拒絶反応発症の予測には最も強い関連があることが示された。移植腎生検標本における免疫組織染色でも、血清CXCL10濃度高値症例で尿細管におけるCXCL10の強い発現を認めた。現在、ラットの腎移植モデルを作成し、さらに急性細胞性拒絶反応とケモカインの関係について検討予定である。
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