研究課題/領域番号 |
26861496
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
峯岸 芳樹 福井大学, 医学部附属病院, 助教 (10467566)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 軟骨細胞 / 脱分化 / lineage tracing |
研究実績の概要 |
ES細胞やiPS細胞からの各種臓器の細胞への分化誘導やダイレクトリプログラミングによる線維芽細胞からの分化など近年のtissue engineeringの技術進歩には目覚ましいものがある。軟骨細胞の再生医療では変形性膝関節症における膝関節軟骨の修復や小耳症における耳介軟骨のブロック作成での臨床応用が期待されている。また軟骨疾患の病態解明のツールとしても大いに注目を集めている。 細胞数を増加させるために初代軟骨細胞培養を行うと増殖の過程で線維芽細胞様細胞に脱分化することが広く知られている。in Vivoにおいても軟骨変性疾患では軟骨細胞が軟骨としての形質を消失し、線維化する。本研究ではこのことに着目し、軟骨細胞線維化のプロセスを解明していくことを目的としている。そのための解析方法として、ある種の状態で蛍光性を持たせた軟骨細胞の状態を比較することで脱分化軟骨細胞を明瞭化させるための手法を開発する。今まさに軟骨細胞である細胞がGFP陽性となるCol11a2-EGFPマウスと今まさに軟骨細胞である、もしくはかつて軟骨細胞であった細胞がYFP陽性となるCol11a2-cre; Rosa-stop flox-EYFPマウスの2種類のマウスから採取した初代培養軟骨細胞の蛍光性の差異から脱分化した軟骨細胞を描出することが可能になる。 軟骨細胞が脱分化していく過程をlineage tracingの手法を用いて経時的に観察し、脱分化のメカニズムの解析を行う。また軟骨細胞の脱分化を規定している因子についての探索を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年までに引き続き軟骨細胞の脱分化の観察のために必要となる軟骨細胞を供給するマウス(Col11a2-EGFPマウス、Col11a2-creマウス、Rosa-stop flox-EYFPマウス)の系統維持を行い、それらを交配したCol11a2-cre; Rosa-stop flox-EYFPマウスを供給した。それらのマウスがin Vivoでどの部位に蛍光性を保っているのかを膝関節周囲組織の凍結切片を作成し、確認した。 昨年度に検討した野生型マウスの初代軟骨細胞培養で脱分化を観察するための培養条件(単層培養、培養液、播種細胞数、添加化合物)を用いて、Col11a2-EGFPマウスとCol11a2-cre; Rosa-stop flox-EYFPマウスの肋軟骨、大腿骨頭、膝関節の軟骨細胞の培養をおこなった。その培養過程をBioStation CTを用いて4時間毎に蛍光撮影することで培養軟骨細胞の脱分化の様子を捉えた。それに加えて軟骨細胞の単層培養時の培養初期と培養終期の細胞を回収しmRNAを抽出してreal time PCRを行い、軟骨マーカー、線維化マーカーについての検討を行い、蛍光性とRNA発現の相関性を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の平成28年度の推進方策としては、蛍光性をもった軟骨細胞を供給するCol11a2-EGFPマウス、Col11a2-EYFPマウス、Rosa-stop flox-EYFPマウスの継続した交配繁殖・系統維持とCol11a2-EYFP; Rosa-stop flox-EYFPマウスの安定した供給を行っていく。 平成26年度、27年度の研究で得られたデータをもとに軟骨細胞の脱分化を制御している遺伝子をマイクロアレイを用いて、その候補を探し出す。適当な候補遺伝子が見つかれば培養軟骨細胞の系でその遺伝子の強制発現、強制抑制の実験を行い、軟骨細胞の形態にどのような変化がおきるかをBiostation CTを用いて経時的に観察することで、その軟骨脱分化制御の候補遺伝子の新規役割を明らかにしていく。 ここまでの研究で得られた知見を検討し、国内外の学会に参加して発表を行っていく。まとめた内容を論文執筆し、その校正作業および学術誌への投稿を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今まさに軟骨細胞である、もしくはかつて軟骨細胞であった細胞がYFP陽性となるCol11a2-cre; Rosa-stop flox-EYFPマウスはCol11a2-creマウスとRosa stop flox-EYFPマウスを維持・交配する必要があり、系統確立に昨年度の段階で時間を要していた。 その分初代軟骨細胞脱分化観察の実験が当初の予定より遅れたこともあり昨年度からの繰り越しが生じた。本年度の計画は概ね順調であり、昨年度に繰り越した分がそのまま本年の次年度繰越しになることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では継続して軟骨細胞の初代培養に必要な培養液や添加物・薬品の購入、培養皿やピペットなどの実験機器の消耗品の購入やreal time PCRを行う際に必要となるプライマーや各種実験キットの購入を行う予定である。 また実験から得られた成果を発表し、最新の知見の情報交換するために各種学術集会に参加するための旅費を計上する予定である。成果がまとまり次第、論文執筆を行い、その校正や投稿を行っていく。
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