近年のtissue engineering技術の進歩により、ES細胞やiPS細胞からの各種臓器細胞への分化誘導は目覚ましい進歩を続けている。また線維芽細胞をダイレクトリプログラミングにより幹細胞の形態を経ずにさまざまな細胞へと性質変化させる研究も数多く報告されている。軟骨細胞の再生医療分野においては変形性膝関節症での軟骨修復や小耳症での軟骨ブロックの作成において臨床応用が期待されている。軟骨細胞を臨床に用いるためにはたくさんの細胞数が必要になるが、分離した軟骨細胞を培養すると容易に脱分化をおこし、軟骨としての性質を失うことが知られている。また生体内でも軟骨組織は損傷をうけると特徴的な弾性を失い、線維化軟骨となる。 本研究では軟骨細胞の脱分化過程を観察するためのツールとしてlineage tracingの手法に着目した。いままさに軟骨細胞である細胞がGFP陽性となるCol11a2-EGFPマウスと、いま軟骨細胞であるもしくはかつて軟骨細胞であった(脱分化し線維化を起こした)細胞がYFP陽性となるCol11a2-Cre; Rosa-stop flox-EYFPマウスを作成した。それらから採取した軟骨細胞の初代培養を行い、タイムラプス撮影で観察し、その差異を抽出することで脱分化をおこした軟骨細胞を明らかにするシステムを開発した。 軟骨細胞が脱分化する際に起こる形態の変化を解析し、脱分化を制御している遺伝子に関して探索を行いおよび軟骨細胞の脱分化抑制方法の可能性について検討した。
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