研究課題/領域番号 |
26870204
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
平倉 圭 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (90554452)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 拡張された心 / エージェンシー / ハイブリッド・コレクティヴ / 芸術制作プロセス / ピカソ / ゴダール |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、芸術制作における物体化された思考プロセスを明らかにすることにある。研究は理論的解明と作品の具体的分析の二面で行われる。 平成26年度は、特に『ピカソ――天才の秘密』(アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督、1956年)に記録されたパブロ・ピカソ《ラ・ガループの海水浴場》(1955年)の制作過程の研究を集中的に行った。 研究は、(1)制作過程を記録した映画・写真・文献の分析、(2)東京国立近代美術館における現物の精密分析、(3)理論的考察の3点で行われた。245ショットに分割して記録された《ラ・ガループの海水浴場》の制作過程は高度に非没入的なものであり、そこに画家ピカソ、監督クルーゾー、作曲家オーリック、編集者コルピといった複数のエージェンシー、絵画作成と映画撮影・編集における複数の技術的条件が深く参与して、集合的・異種混淆的思考を構成していることを研究は明らかにした。 研究成果は、表象文化論学会第9回研究発表集会において「合生的形象:ピカソ他《ラ・ガループの海水浴場》(1955)における物体化された思考プロセスの分析」の題で発表された。現在論文を準備中である。 また来年度に向けて、ジャン=リュック・ゴダールによる初の3D映画『さらば言語よ』について予備的研究を行い、左右視の分裂によって可能になる新たな映画的思考について研究成果をまとめつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピカソ《ラ・ガループの海水浴場》について、1. 生成プロセスの分析、生成プロセスの記述法開発、2. 生成環境の間メディア的分析、3. 先行研究調査、4. 「拡張された心」理論を通した解釈を行って成果を学会発表し、当初の研究計画をおおむね順調に達成しているため。
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今後の研究の推進方策 |
ピカソ研究を継続するとともに、理論的考察を深化させる。また他の具体的事例(ゴダール、ロバート・スミッソン他)の研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
ピカソ《ラ・ガループの海水浴場》について、国内(東京国立近代美術館)での調査事項およびその成果が当初想定より深いものとなったため、海外での調査を延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度以降に海外での調査を行う。
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