研究課題/領域番号 |
26870727
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
高橋 智一 関西大学, システム理工学部, 助教 (20581648)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 真空吸着グリッパ / タコ / 吸盤 / 生体模倣 / 微細構造 |
研究実績の概要 |
産業分野における部品の搬送や組立では多様な形状、質量をした物体を把持することがロボットハンドに求められている。そこで我々はタコを模倣した汎用グリッパに注目した。本研究では、タコの吸盤にあるとされている、放射状の溝、同心円状の溝、数μmの突起の3つの微細構造が吸着力に与える影響を明らかにすることを目標としている。そのために以下の3つの方法を試す:方法1)生きたタコの吸盤や吸着動作の観察、方法2)微細構造を模倣した真空吸着グリッパの作製と評価、方法3)有限要素法(FEM)による解析。まず本年度は、生きたタコの吸盤の観察を行い、それをもとに微細構造を模倣したグリッパ作製を行った。またFEM解析により放射状の溝がある場合について解析した。 まず生きたタコの吸盤を高速度カメラにより観察した。透明な水槽に入ったタコの吸盤が水槽壁面に吸着する際の吸盤を広げる動き等は観察できたが、観察可能な溝の動きを観察するには至っていない。そこで微細構造の形状や寸法を計測して吸着グリッパを作製した。微細構造の観察、計測には走査型電子顕微鏡(SEM)とレーザー顕微鏡を用いた。吸盤には、放射状の溝、同心円状の溝、数μmの突起の3つの微細構造が観察されたが、放射状の溝と数μmの突起を模倣した。グリッパのシリコーンゴム構造は金属製の型を用いた注形法により作製するが、突起形状の成型はSiを微細加工した型を使用した。吸着試験を行い微細構造の有無に対する吸着力を比較すると、微小な突起や放射状の溝があることで吸着力が向上することがわかった。これは吸着面積の増加が要因と考えられ、突起があると吸着時の吸盤の真円度が高いこと、放射状の溝があると吸盤が広がることによると考えられる。溝があると吸盤が広がることはFEM解析でも確認された。以上のように微細構造があることにより吸着力が向上することは確認されたが、今後はそのメカニズムを明らかする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標を達成する3つの方法のうち2つをほぼ終えていることからおおむね順調に進展している。タコの微細構造の寸法や形状を明らかにし、この構造をもつグリッパの作製法を確立できており、微細構造があることで吸着面積が増え吸着力が向上することがわかっている。また放射状の溝に関してはFEM解析により吸着面積が広がることが確かめられた。模倣できていない同心円状の溝に関しても同様の方法により作製でき、次年度にその評価を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の計画変更はなく、今後の推進方策は以下のように行う。3つの微細構造のうち模倣できていない、同心円状の溝を形成したグリッパを作製し、吸着力に与える影響を検証する。前年度に引き続き、微細構造により吸着力が向上するメカニズムを実験や解析で明らかにする。
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