研究実績の概要 |
わが国におけるアルコール消費は、その文化的背景から伝統文化として後世に伝承していくものであると同時に、日常生活に適度な潤いを与えてくれているのは紛れもない事実である。ただし不適切な飲酒が多様な問題を引き起こすことは、すでに多くの研究において繰り返し指摘されてきた。本研究では、飲酒量と健康調査に加えて、アルコール関連問題に対する意識や態度、酒類メーカーを踏まえた予防と対策に関する様々な取り組みの認知度や意見を尋ねる包括的な調査を実施し、アルコール関連問題の予防と低減に向けた基礎資料とすることを目的とした。本研究では成人男女1,800名を対象に、飲酒頻度と飲酒量を尋ねた健康調査に加えて、飲酒に対する態度やイメージ、飲酒に待つわる体験、アルコール関連問題の予防と対策に向けた取り組みの認知度や望ましい対策等についてインターネット調査を用いて尋ねた。本研究の結果から、何らかの飲酒の問題を抱え、精神的健康状態が懸念される対象者が一定数存在すること、飲酒に対する寛容さやハラスメントにつながりかねない危うさ、依存症者に対するステレオタイプや誤った認識がもたれていることが予想された。アルコール関連問題の予防に向けては、既存の取り組みの充実が望まれているいっぽうで、マーケティングや酒税の値上げといった取り組みは、今後の慎重な議論を要すると思われた。また酒類メーカーによる取り組みや、医療、行政、自助グループといった社会資源に関する認知度は概して高いとはいえず、効果的かつ積極的な啓発や取り組みが必要であると考えられた。
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