本研究は、従来の日本語指示詞研究の成果をMax Planck心理言語学研究所認知人類学研究グループが中心となって構築した認知類型論的な枠組みで再分析し、彼らが導入した注意概念を用いて各形式の意味機能を記述した。 本研究の意義は以下の3点である。(i)上述の研究者達が提示した自然談話データの詳細な分析という研究手法を用い、発話時の聞き手の注意の状態が指示形式の選択に決定的な影響を与えていることを明らかにした、(ii)他言語の指示詞の最新の研究成果と日本語指示詞の対照研究を可能にした、(iii)注意概念を用いることで、認知科学・脳科学など他分野の知見を取り入れた学際的な指示詞研究を可能にした。
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