本研究は、民法起草時に参照された外国法令に関する情報を探索・収集し、日本民法典の条文と参照された各国の条文の相互の関係を明らかにすることを目的とする。平成27年度は、(1)前年度に引続き外国法令を整理・収集するとともに、(2)データベースの構築と(3)参照外国法令の分析をおこなった。 (1)について、前年度は、登場する外国法令の名称を原典表記のまま整理したに過ぎず、具体的な検討はおこなえなかった。具体的に外国法令を特定したところ、名称の表記ゆれが存在することがわかった。表記ゆれを考慮した結果、34ヶ所の国と地域、124種類の法令に整理することができた。また、参照している判例も調査した結果、34ヶ所のうちの4ヶ国で参照していることがわかった。さらに、外国法令について、インターネット上で閲覧できる資料を探索した結果、110種類について、インターネット上で閲覧できる何らかの資料を特定することができた。 (2)について、(1)の調査結果を明治民法情報基盤(http://www.law.nagoya-u.ac.jp/jalii/meiji/civil/)に組み込み、誰でもインターネットから利用可能なデータベースとして公開した。 (3)について、外国法令・判例の参照割合を起草担当者別・編別に算出した。これにより、起草担当者別で見ても、また、編別で見ても、参照傾向にバラつきがかなりあることがわかった。さらに、物権編の質権の章を取り上げて検討したところ、起草委員の傾向と、編別の傾向は、互いに織り交じりながら、独自の様相を呈しているとことがわかった。
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