研究課題/領域番号 |
26885125
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研究機関 | 国立社会保障・人口問題研究所 |
研究代表者 |
渡辺 久里子 国立社会保障・人口問題研究所, 企画部, 研究員 (30733133)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 消費パターン / 等価尺度 / 低所得 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)分布の補正方法の検証、(2)等価尺度の推計、(3)不況下における世帯消費構造の変動を実証的に分析することである。 研究第1年目は、(3)不況下における消費構造の変動に関して、一時点での集計及び分析を行った。長期的な世帯所得の落ち込みとデフレ経済の中、世帯消費も低下していた。特に、低所得世帯においては基礎的な支出(食費、住居費等)を減らすことで、所得の低下に対応していた可能性があり、ウェル・ビーイングの低下は大きかったと考えられる。 そこで研究第1年目では、慶應義塾大学『日本家計パネル調査』の2009年の個票データを用いて、まずは低所得世帯と非低所得世帯の消費構造に関して地域差を考慮して分析を行った。その結果、低所得世帯では、非低所得世帯に比して食費、教養・娯楽費等への支出が大幅に低くなっていたことが分かった。また、政令指定都市や、関東・近畿ブロックにおいては、消費支出に占める住居費の割合が、低所得世帯で高くなっており、負担が大きくなっていることがわかった。 なお、本研究結果は渡辺久里子(2014)「所得と消費からみた貧困の状況-貧困率と消費パターンの地域差に関する分析」『貧困研究』Vol. 13に所収されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究第1年目は1時点での分析を行い、研究成果も刊行することができたが、本研究の目的の1つであるデータの補正方法や等価尺度の検証には十分着手できていないため、やや遅れていると評する。
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今後の研究の推進方策 |
研究第2年目は、1年目に引き続き(1)分布の補正方法の検証、(3)世帯消費構造の分析をするとともに、(2)等価尺度の推計をする。 等価尺度は「世帯規模の経済性」を調整して、世帯単位の所得・消費分布を個人単位化する際に用いるパラメータである。日本では等価尺度の推計に関する研究蓄積は少なく、近年国際的に用いられる「世帯人員の平方根」を先験的に与えて、分析が行われてきた。 しかしながら、「世帯人員の平方根」は「世帯規模の経済性」の調整程度に限界があると指摘されている。等価尺度の選択は貧困・格差を分析する際に大きな影響を与えるため、検証が必要である。そこで本研究では、消費データを用いて等価尺度を推計する。推計方法としては、プロペンシティ・スコア・マッチング推計等を用いる。 (3)の世帯消費構造の分析では、長期的な世帯所得の落ち込みとデフレ経済の中、世帯消費も低下していたが、消費の下落に何が影響していたか、消費構造の変化を要因に関する分析をする。研究第1年目では、慶應義塾大学『日本家計パネル調査』の2009年の個票データを用いて、低所得世帯と非低所得世帯の消費構造に関して地域差を考慮して分析を行っている。本年度は、1時点の分析ではなく長期的な推移を検証する。 これらの検証を通じて、貧困・格差指標とは異なる、世帯のウェル・ビーイングを観察するための新たな視点を提供することを目的とする。低所得世帯の消費水準は、所得保障給付の水準を決定する際のメルクマールとなってきたが、世帯所得が低下するなかで、消費構造は変化しており、従前通りの参照方法でよいのかに関してインプリケーションが提示できると思料する。
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