研究課題
A)本年度は、本土における中心的酪農県帯である栃木県黒磯市青木地区の実態調査をおこなった。ここは戦後の開拓をへて、1部は稲作中心経営に転換したが、他の多くの農家が酪農専業化の方向を辿ったところである。階層分解がはげしく進行し、これまで10戸以上が離農、のこる農家も酪農専業的農家33戸、米と乳牛または和牛の複合経営農家12戸、農産物販売金額50万円以下の兼業農家12戸、その他3戸に分化している。こうした階層分解は、労働力の保有状態、昭和40年代後半以降の新技術導入(自然流下式;スタンチョン畜舎;通年サイレージ方式;ミルカーとクーラー導入など)と密接に関連している。これらを保有・導入したもののみが酪農専業化しえた。こんにち 酪農経営にとって後継者の有無は決定的で、45才以下の若手グループのいるところでは乳牛検定、飼料成分分析等により乳量水準別給与をおこなっているが、乳牛管理方.働力が50才以上のばあいは牛の状態をみての「目勘」にたよる経営になっていて、両者のあいだに1頭当たり乳量に大きな差異が生じており、科学技術をわがものとしうる経営しかこんご生きのこれそうもないきびしい状況にある。B)さらに、本研究参加者の各研究分担課題による研究を本年度さらにおしすすめ、全体研究会を2回にわたりもった。実態調査による研究成果をとりいれつつ、数年後には、『戦後日本農政の展開過程』(假題)に関する総括的研究を一書の形にとりまとめ、公刊する予定にしている。