研究概要 |
銀河系中心方向の暗黒星雲の観測を広範にすすめた。名大4m短ミリ波望遠鏡を用いて、昭和60年11月より61年3月にかけて、銀緯15°-30°,銀経350°-10°(へびつかい座)に広く分布する暗黒星雲を観測した。従来ほとんど観測されていなかった銀緯の高い領域を観測したことが特徴である。得られたスペクトルは、【^(12)CO】(J=1-0)について3300点、【^(13)CO】(J=1-0)について2300点に及び、各々33平方度,20平方度をカバーしている。データの典型的なRMS雑音は約1.0Kである。 観測によって明らかになったこの領域の暗黒星雲の特徴は、その形状がフィラメント状をなしている点にある。一本のフィラメントは、長さ約10-20pc,幅1-2pcであり、【^(13)CO】とCOの強度比から求めたフィラメント一本あたりの質量は1000太陽質量前後である。 星間分子雲の形状がしばしばフィラメント状を示すことはこれまでにもおうし座暗黒星雲などで示されてきたが(例 Baran and Thaddeus 1981)、へびつかい座領域でのフィラメント構造はこれまで見出されたものの中で最もきわだっている。フィラメント構造の成因については、諸説提案されており、フィラメント内の速度場、光の偏光観測によって明らかになっている磁場の向き等の情報を用いて、成因の検討をすすめている。
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