(1)ラテックス粒子をマウスに静注してクップエル細胞に貧食させ、長期間(3日から8ヵ月)にわたりその行方を電子顕微鏡で観察したところ、大量のラテックス粒子を貧食したクップエル細胞は肝内の結合組織内に集まり、大きいグラヌローマを形成し、肝実質の機能に障害を起すことなく、恐らく生涯にわたって滞留する。消化・排泄の不能な異物が大量に入った場合の一種の防禦反応と見倣すことが出来る。 (2)フォスフォリパーゼ【A_2】のアクティベーターであるメリチンやマストパランを含んだ培養液で下垂体前葉を培養すると、分泌果粒の限界膜が融合しあい、外に開は、多果粒性開口分泌(multigranular exocytosis)を起すことを明らかにした。 (3)テストステロンからエストロジェンを作るに必要な酵素であるアロマターゼは、ラットの精巣ではライディッヒ細胞に局在することを免疫組織化学的に明らかにした。精巣においても少量のエストロジエンが作られるが、その最終反応がライディッヒ細胞で起ることを示したことになる。 (4)胃の表層粘液細胞が生理的変性を起し、胃の表層から剥脱する過程を透過および走査型電子顕微鏡によって観察した。一種の全分泌(ホロクリン分泌)と見倣すことが出来る。 (5)副腎皮質ホルモンの生合成過程に必要な酵素である側鎖切断酵素と11B水酸化酵素とがミトコンドリアの内膜に局在することを示した。 (6)ブタの甲状腺をコラゲナーゼとトリプシンで処理し、高濃度の牛胎児血清を含む培養液で培養すると濾胞上皮細胞の極性が逆転する。そのさいの濾胞腟側の閉鎖帯が培養液側へ移行する過程や、細胞内のゴルジ装置や水解小体が移行する経過を電子顕微鏡で明らかにした。
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