研究概要 |
昭和59年度の成果から、本年度は(1)抗ミオグロビン抗体を用いた虚血性心病変の検査法の確立、(2)急死モデルの確立のための予備実験、(3)虚血性心病変の実験モデルの作製と法医中毒学への応用、(4)心臓に対する毒性物質の組織内分布に関する研究についての諸問題を重点的にとりあげて、次のような成果を得ている。 (1)抗ミオグロビン抗体を用い、死の慢性的経過をとった症例50例について各心臓部分の組織学的検索を行なったところ、急死の場合にみられる心変性よりも著しく重篤な心筋壊死性変化を示すものが多く、特に急死の経過をたどるべき熱射病で医療を加えたものについては、心筋全層に著明な壊死性変化がみられる。したがって、ミオグロビンの組織内分布を同定することにより、死のプロセスを客観的に評価することが可能になった。 (2)抗ミオグロビン抗体を用いた組織学的検査法は実用の段階に達したものとみられるので、これらをまとめて、昭和61年4月に刊行される「臨床法医学」にその成果をまとめた。 (3)急死モデルとしてニワトリを用いて検討中であるが、本動物においては刺激伝導系、とくにプルキンエ線維が不均一系(形態学的)であることを見出し、これを報告しているが、更に、洞結節,房室結節,心房内の伝導系にもそれぞれ特徴があり、これがミオグロビン染色により、より明確に把握できることを見出した。 (4)Langendorff法を用いて、虚血性心病変の分析を行なっているが、一酸化炭素や青酸中毒の状態における心筋をNMRを用い生化学及び形態学的に分析しているが、生体を用いた場合の如く中毒効果がはっきりしないことが明らかとなった。 (5)心筋障害性の薬物や、ヒロポンの組織内分布を免疫組織化学的に検出することに成功した。
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