研究概要 |
近年、2つ以上の神経伝達物質又はneuromodulatorが1つの神経細胞に存在することが明らかになるとともに、神経細胞の発育、成長に伴ってその産出する神経伝達物質が何らかの誘因により他の神経伝達物質にも変換しうることが明らかとなり、より広義の立場での神経可塑性の研究は新しい局面をむかえている。また難治性疾患である変性性神経疾患の発症過程に神経可塑性が関連するという報告もみられ、神経伝達物質、神経ペプチド及びその受容体の可塑性の研究は原因不明とされる神経疾患の病態・機序を探る手がかりになると考えられる。本年度は、正常実験動物を用いた昨年度の実験に引続き、変性性神経疾患の代表であるパーキンソン病及び脊髄小脳変性症患者剖検脳における各種神経伝達物質受容体の分布をautoradiographyを用いて検索し次の結果を得た。1)パーキンソン病では、ドーパミン作動性麦角アルカロイドであるlisuride結合部位が、対照脳と比較して淡蒼球で増加しており、海馬傍回で減少していた。【β_2】-adreneceptor agouistである【^3H】-dihydroalprenolol結合部位が小脳,中心前回,中心後回で減少していた。muscarinic acethylcholine receptor antagonistである【^3H】-QNB結合部位は被殻で増加していた。【^3H】-substance Pは淡蒼球で増加していた。2)脊髄小脳変性症では、対照脳と比較して、歯状核でGAB【A_A】受容体が増加、glutamate受容体が減少、大脳皮質でaspartate及びglutamate受容体が減少していた。3)脊髄小脳変性症モデル動物であるローリングマウスナゴヤでは、小脳のGAB【A_A】及びaspartate受容体が減少していた。以上の変性性神経疾患を用いた実験に加えて、昨年度の【^3H】-QNB及び【^3H】-substance Pに引続き、muscarinic acethylcholine Ml subtype antagonistである【^3H】-pirenzepine及び【^3H】-enkephalin結合部位の正常実験動物の脳における個体発生学的変化をautoradiographyを用いて現在検索中である。
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