研究概要 |
ウシ大脳皮質より得たシナプス膜分画をCHAPSにより可溶化し、新しいベンゾジアゼピン・アフィニティカラムクロマトグラフィ(1012-S-adipic hydrazide Sepharose 4Bを使用)に適用して、GABAAレセプター,ベンゾジアゼピン 【II】型レセプター及びクロライドチャンネルを精製した。これらのレセプターは相互に機能的共役能を有するレセプター複合体として存在し、そのサブユニット構造をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動法で観察すると、53,000と57,000の2つのサブユニットよりなり、その両者がベンゾジアゼピン・レセプターを有していた。これらの結果は先に研究したラット脳の場合、すなわち、485,00と51,000の2つのサブユニットよりなるものとは異って居り、本レセプターではサブユニットレベルにおける種差が存在する可能性が示唆された。次にこのレセプター蛋白の組成をみると、hybrid型糖鎖を有する糖蛋白であり、このレセプター複合体蛋白の分子量は340,000と算出された。ベンゾジアゼピン・レセプターの内在性リガンドとされるβ-エチルカルボリンカルボキシレートは確かに本レセプターに親和性を有するが、ベンゾジアゼピン結合に対して競合性阻害能を有さず、従って同一の部位に結合するものとは考えられないとの結果を得た。更に本GABAレセプター複合体蛋白をアジュバンドと混合してエマルジョン化し、家兎又はマウスに2週間毎に投与したところ、明かに抗体生成がみられ、二重免疫拡散法で単一沈降線の存在が確認された。また免疫沈降法により本抗体は単一のものよりなることが確認出来た。本レセプター抗体を用いて免疫組織化学的にラット脳内における免疫反応の分布を検討したところ、黒質緻密層,小脳プルキニエ細胞体周囲,大脳皮質維体細胞周辺,海馬の大型細胞などGABAAシナプスの存在する部位に密に存在していた。
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