研究概要 |
ウシ大脳皮質より得たシナプス膜分画をNonidet Pー40又はCHAPSにより可溶化し、新しいベンゾジアゼピンである1012ーSを固定化リガンドとしたベンゾジアゼピン・アフィニティカラムクロマトグラフィを使用してGABAレセプターを純化精製し、その薬理学的・生化学的性質を明かにすると共に、この精製GABAレセプターを特異的認識抗原としてレセプター抗体を作成し、GABAレセプターの脳内分布を検討して次の結論を得た。1)本精製レセプターはGABA_Aレセプター、ベンゾジアゼピンII型レセプター及びクロライドチャンネルを有し、53,000と57,000の2つのサブユニットよりなっていた。2)このレセプター複合体は分子量340,000の糖蛋白で、GABA_AレセプターとベンゾジアゼピンII型レセプターは機能的にも共役能を有して居り、この共役は本レセプターの有するhybrid型の糖鎖により活性調節を受けていた。3)GABAレセプター複合体蛋白をアジュバンドと混合してエマルジョン化し、家兎に2週間ごとに連続皮下注射したところ、明かに抗体生成がみられ、二重免疫抗散法で単一沈降線の存在が確認された。4)本レセプター抗体を用いて免疫組織化学的にGABAレセプター複合体の脳内分布を検討したところ、小脳ではプルキニエ細胞体周辺及び顆粒細胞層に、黒質では緻密層の大型細胞体周辺に、大脳皮質では第3〜5層に存在する維体細胞周辺に、また海馬では深層に存在する大型細胞の細胞体周辺に、それぞれ密な存在を示した。更に黒質緻密層の大型細胞の場合には、本レセプターが網状に密な連絡網を形成して存在することが判った。5)本可溶体レセプターをリポゾームに組込んでGABA及びベンゾジアゼピン類を適用したところ、明かに^<36>CIのinfluxが増加するのが認められ、本レセプター複合体はGABAレセプターとしての機能を保持していると判断された。
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