1.目的:流れの場の計測は、従来、流れの中の固定した一点ないしは数点で連読的に流速変化を記録する、いわゆるオイラー型の計測が行われてきた。熱線流速計やレーザー流速計がこれに当る。これに対し、近年種々の流れの可視化技法が開発されている。前者は定量的で緻密な測定が特徴であり、後者は流れの場の全体的把握に優れている。 本研究は、2つのタイプの流速測定法の長所を合わせた計測装置として、ビーム・スキャン型レーザー流速計を開発し、その性能を確認することを目的としている。 2.内容:レーザー流速計は非接触型(非プローブ挿入型)流速計として最近開発された新計測法である。本研究では、2本に分光されたレーザー光の交叉焦点を回転ポリゴン・ミラーにより流れの場を高速でスキャンさせ、流れに直角な一直線上の流速を(流れの場が流下することにより実質的には平面上の流速を)ほぼ連続的に計測しようとするものである。中央処理系には、受光系であるフォトマルからの瞬間流速信号と、その時点でのミラー駆動系からのレーザー焦点位置の信号が同時に入力され、処理をしつつ結果が記憶系にストアーされる。本装置の最大スキャン速度は5.8m/s、スキャン幅は7〜10cmであり、充分な実用性を持っている。 3.結果:本装置の性能を確認するために、典型的な非定常流れの場である、【◯!1】カルマン渦列、【◯!2】振動流境界層、【◯!3】渦輪について実験を行い、流れの可視化計測の結果とも比較した。その結果、本装置が充分な実用性を持つことが示された。 本研究で開発したビーム・スキャン型レーザー流速計は、非定常な流れの場や乱流の組織的渦構造の計測など繰り返しのきかない流れの解明に貢献すると思われる。
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