検査試料採取に制限のある新生児、乳幼児に発見される慢性酸血症を伴った先天性代謝異常症は、病因が多様で、診断の確定した症例は極く一部で、早期の診断・治療上支障が生じている。本症の診断には欠陥酵素活性値と酸血症の起因物質である血清及び尿のα-ケト酸分析値が、診断の根拠となっている。酵素診断法については検討を重ね、超微量・簡易測定法を確立したが、α-ケト酸の定量法は開発が遅れ、早急な対応が求められてきた。最近、私共は、α-ケト酸がο-フェニレンジアミンと縮合して生成するキノクサリン(QXL)が強い螢光を示すことを見出したので、この性質を利用し、α-ケト酸のQXL誘導体を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分離し、螢光検出器(λEx350nm、λEm410nm)で定量する超高感度・迅速・簡易定量法の開発、操作の自動化、臨床応用を推進し、実用性の高い方法を確立出来た。 1.ピルビン酸、分枝鎖α-ケト酸など7種類以上のα-ケト酸の混合液を螢光標識化(QXL誘導化)し、逆相法で60%メタノールでイソクラティックに溶出分離し、螢光分析すると10〜125pmol範囲で、25分以内に分離定量出来た。さらに操作の全自動化を目標に改良を重ねた。 2.血清・尿中α-ケト酸定量に欠せない除タンパク法を検討し、タングステン酸ナトリウム法が優れている事が分った。対照、酸血症例試料の分析に応用し、正常値の設定と臨床での実用性を確認した。 3.オキザロ酢酸とピルビン酸、フェニルピルビン酸とα-ケトイソカプロン酸がHPLC上一致して溶出するので、分画定量法を考案した。 4.血清・尿採取法、保存法、輸送法を検討した結果、厚手のろ紙に0.1〜0.2ml塗布し、室温で風乾し、郵送した後、純水で抽出、除タンパクし、上清中のα-ケト酸を定量したが、90%以上の好回収率である事が判明した。酸血症のスクリーニングに十分応用し得る方法であることが実証出来たので、その具体的方法を検討中である。
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