ここ数年、電顕免疫組織化学的手法は著しく進歩し、病理診断において不可欠なものと成りつつある。しかし、この手法は非常に複雑でかつ特殊な機器を必要とするため、普通の研究室や実験室での実施が困難で、一般化されにくい。これらの理由から、操作が簡単で、光顕レベルの様に広視野でかつ電顕レベルの様に高分解能を持つ免疫組織化学的方法が求められている。この様な要求を満たす一つの手段として、光顕用切片を電顕レベルで観察することができる電子顕微鏡の開発がある。このためには、走査型電子顕微鏡の反射電子像の利用が最良と考えられる。本研究では、日電子ラクニクス社のT200型走査型電子顕微鏡本体の資料室を改良して光顕用対物レンズを組み込むことにより、同一の光顕用切片を、光顕、電顕レベルで観察でき、光顕的に抗原の分布を把握してから局所を電顕レベルで高倍率で観察することを可能にした。従来の電子顕微鏡の解像力には未だ及ばないが、走査型電子顕微鏡の対物レンズの改良と走査型電子顕微鏡の対物レンズとスライドガラス間の距離の調整により解像力の向上が期待される。組織標本が貼付されたスライドガラスは絶縁体であるため、標本をアースする方法の開発が必須であった。組織切片を利用して帯電防止効果を走査型電子顕微鏡の反射電子像で検討した結果、鉄アラム処理が帯電防止に最良であった。また、光顕用切片を直接、電顕で観察するため、重金属による組織切片の染色法を検討したところ、オスミウム・チオカルボヒドラジド・オスミウム染色が反射電子像形式に良好な結果を得た。従って、反射電子像での抗原の局在の証明には、固定した組織を樹脂包理して1〜2ミクロンの切片を作製した後、スライドガラス表面に貼付し、ペルオキシダーゼ標識抗体と反応させ、ジアミノベンチジン発色反応をしてオスミウム酸とキレートし、酢酸ウランで核染色後、鉄アラムで処理する方法が最適と考えられた。
|