1 緒 言 : 粒子線の高いエネルギー賦与(高LET)と荷電粒子線の優れた線量分布(Bragg Peak)を応用してがん治療成績を向上させるために必要な基礎研究を行なった。粒子線の名目的標準線量(NSD)と晩期放射線効果の評価に重点を置いて研究を進め、重荷電粒子線の生物学的効果比(RBE)に関する研究はローレンスバークレイ研究所(LBL)の協力を得て実施した。 2 研究結果 : a 生物学的基礎研究 : 速中性子線治療の基礎になるNSD公式は早期皮膚反応についてほぼまとまった。速中性子線のNSD推定に必要な線量分副因子CN兇の乘數はx線よりも小さく、LETが高くなるにつれて低い値となることが分った。速中性子線による皮膚・軟部組織の晩期効果(マウスの後肢短縮を含む)は早期反応と相関と、線量が耐容限度を越え、線量分割數が多くなる程重篤になることが分った。 重イオンの中でシリコンイオンに関する研究が進み、そのピーク位置のRBEはx線に対して2.4となり、その値は入射部よりも大きい。 陽子のRBEは0.95である。 b 臨床トライアルによる基礎研究 : 速中性子ブースト照射によるNSDは900retと定まり、ブースト照射のRBEの値2.2は速中性子線の単独照射の時よりも小さい。陽子線による皮膚の線量効果関係はストランドクイスト型を示すことが分った。 3 結 論 : 速中性子線の治療可能比を求める研究では、NSD公式が定まり、晩期効果に関する研究が進んだ。陽子と重イオンのRBEがかなり明らかになった。
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