研究概要 |
核融合炉の開発にあたっては、14MeV中性子による原子はじき出しとガス生成による炉材料の損傷が重大問題となっている。 高フルエンスである炉条件を模疑出来る大出力14MeV中性子源が存在しない現在、原子炉による照射実験を利用せざるを得ないが、その場合、核融合炉と核分裂炉との間の損傷相関則を明らかにする必要がある。 本研究においては、損傷相関則を得るための理論計算コードシステムを開発することを目的としている。 従来の研究により、中性子核反応データがかなり良い精度で整備されてきたので、これをもとにして原子ノックオンスペクトルを二重微分断面積データとして材料毎に与える計算コード(PKAS)をまず作成した。 二重微分PKAデータは、原子はじき出しとガス生成及び核発熱の最も基本となるデータであるが、その利用に注目したのは本研究と米国LANLのものが初めてで、今後重要性が増大すると思われる。 本計算コードによる解析から、原子はじき出しは殆んど前方向に生ずることが明らかにされた。次にリンドハードの原子衝突モデルに基いて、損傷エネルギーとDPAを計算するコード(DPAS)を開発した。 更にこのモデルの妥当性をテストし、混成元素材料の解析に適用出来るようにするため、はじき出しシュミレーションコード(RUCAS)を開発中である。 今年度は、PKAS,DPAS,RUCASの三つのコードを用いて、トランジスタ(Si)、アルミナ(【Al_2】【O_3】)及びSVS(Fe,Cr,Ni)について、はじき出し損傷の解析を行った。 その結果、はじき出し数(DPA)は普通用いられている理論(キンチンピースモデル)より大巾に少くなること、はじき出しカスケードは前方への線状分布となることが明らかとされた。 損傷相関係数は今のところ1.6〜1.7程度を与えているが、今後結晶効果や原子化学結合による非弾性散乱をとり入れてのコードの改良が必要である。
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