研究概要 |
1.アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AspAT)の機能発現機構:(1)ブタ・ミトコンドリア酵素(mAspAT)および、サイトゾル酵素(cAspAT)に対するcDNAを組みこんだ発現ベクターpYG100を、それぞれ酵母菌AH22,DC5に導入し、各AspATアイソザイムの発現系を確立した(発現率は、可溶性全たんぱくの1〜5%)。(2)既に発現系が確立した大腸菌AspAT(高コピー数のベクター使用)については、部位特異的突然変異の手法により、Lys258をArgに(3%),Tyr70をPheに(0%),Tyr225をPheに(5%)置換した3種の変異酵素を作成した。(かっこ内は、変異酵素の残存活性を示す)。この事実は、従来より想定されているように、Lys258の基質の位水素の引き抜きに与る触媒塩基としての役割は必ずしも必須でなく、むしろTyr70の重要性が示唆された。またTyr225と、補酵素3位水酸基との相互作用は、触媒墜行上かなり貢献するものの必須ではないことが示された。2.酵素の発現調節機構:(1)ブタ・サイトゾル・リンゴ酸脱水素酵素(cMDH)の部分に決定したアミノ酸配列に基づき、ブタcMDHcDNAの一部、さらに、完全長のマウスcMDHcDNAを単離し、構造を決定した。(2)マウスmAspATおよびcAspAT遺伝子を単離した。前者は、約25Kb大、10エクソンを含み、cAspATは約30Kb大で9エクソンから成っていた。cAspATのイントロン8個のうち、5個の位置がmAspAT遺伝子と完全に一致していた。(3)マウスmMDHおよび、cMDH遺伝子を単離した。mMDH遺伝子は、約12Kb大、9エクソンから成り、cMDH遺伝子は約16Kb大で9エクソンから成っていた。AspAT遺伝子の場合とちがって、mMDH遺伝子とcMDH遺伝子の間で、共通の位置にあるエクソンは全く無かった。(4)上記の4種の遺伝子の5側上流には、CAATボックス,TATAボックスなどはなく、転写開始点が複数個存在していた。
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