研究概要 |
1.アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AspAT)の機能発現機構:【○!1】ブタ細胞質局在酵素(cAspAT)のアミノ基末端部を欠失する変異酵素を系統的に作成した(残基1-3、1-5、1-7、1-9、をそれぞれ欠失)。これらの触媒機能と安定性の解析から、6-9領域が隣接サブユニットへの結合と小ドメインの動きに必須であることを明らかにした。【○!2】cAspATの15、16位のアミン酸残基のAsp,Proへの変換により安定性の著増を来し、アミノ基末端セダメントの本酵素の安定性への重要な寄与が示唆された。【○!3】大腸菌AspATの〔Arg386Lys〕および〔Arg292Lys〕変異酵素の詳細な動力学的解析により、基質の両カルボキシル基とこれらArgとの水素結合形成が、安定な遷移状態の形成に必須であることを示した。【○!4】大腸菌AspATのArg292(基質の遠位カルボキシル基の結合部位)を他の10種のアミノ酸に置換した変異酵素は、いずれも本来の基質との反応性を著しく減じた(10万分の1)。一方Leu,Valに置換したものでは芳香族アミノ酸に対する活性は著増し、同じく大腸菌の芳香族アミノ酸トランスアミナーゼが示す値に匹適した。基質特異性を支える構造解析への道を拓く知見である。 2.アイソザイムの発現機構:マウスの細胞質型およびミトコンドリア型MDH(cMDH,mMDH)と、同じく細胞質型およびミトコンドリア型AspAT(cAspAT,mAspAT)遺伝子について、DNAトランスフェクション法によりプロモーター活性をもつDNA領域を検討した。cMDH遺伝子では、翻訳開始点の上流253-170bp,mMDH遺伝子では160-130bp,また、cAspAT遺伝子では264-159bp,mAsdAT遺伝子では177-164bpの各領域が必要であった。ついで、DNaselフットプリンティング法を行った結果、それぞれの遺伝子のプロモーター領域内にタンパク性因子の結合を認めた。これらタンパク性因子の結合部位は、さきにプロモーター活性に重要な領域として同定した部位とオーバーラップして存在した。
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