Bリンパ球は造血系幹細胞にその源を発しプレB細胞を経て成熟B細胞となり、抗原刺激を受け抗体産生細胞へと増殖分化する。このプロセスにはTリンパ球の存在が必須である。この発生、分化過程の異常は、免疫不全、自己免疫、即時型アレルギー、リンパ球腫瘍等の種々の病気の発症につながる。従って、Bリンパ球の発生、増殖、分化のプロセスと、それを調節する分子に関する研究はこれらの疾患の根本原因を解明し、その人為的制御法を確立する上に必須である。この研究はこのような目的をもって行われ、本年度は以下にのべる成果を得た。【i】)Bリンパ球に抗体産生を誘導するBリンパ球分化因子(BCDF)を単離精製し、その部分アミノ酸配列を決定した。【ii】)決定されたアミノ酸配列をもとにペプチドを合成し、抗ペプチド抗体を作製し、この抗体がマイトーゲン刺激T細胞培養上清中のBCDF活性を吸収することを証明した。【iii】)心房粘液腫(Myxoma)患者は自己抗体を産生し、自己免疫様症状を呈するが、Myxoma細胞がBCDF活性をもつ分子を産生し、この分子が抗ペプチド抗体と反応することを証明した。【iv】)活性化Bリンパ球のみを認識するモノクローナル抗体(抗Ba)を作製し、この抗体がBリンパ球増殖因子(BCGF)レセプターを認識する可能性のあることを見い出した。【v】)抗Baと抗IgDを用いたTwo colowr FACS解析により、Bリンパ球をその分化段階に応じて、体止(【G_o】)B細胞、活性化(【G_1】)B細胞、増殖期Bリンパ球に分けうることを示し、BCDFは増殖期Bリンパ球に働くことを明らかにした。【vi】)活性化Bリンパ球、Bリンパ球細胞株、B白血病細胞のいづれもがBCGFを産生すること、これは活性化Bリンパ球にのみ作用することを示し、Bリンパ球増殖にauto crine機構が働いている可能性を示した。【vii】)抗FcεRモノクローナル抗体を作製し、Bリンパ球におけるFcεR発現の調節機構を解析した。
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