近藤らの方法に従い、界面重縮合法によりポリテレフタロイルピペラジンのマイクロカプセルを調製した。光学顕微鏡で観察すると、マイクロカプセルは直径5μmの球であり、一部歪んだカプセルも存有することが示された。ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)リポソームを超音波照射法によって調製し、これをポリテレフタロイルピペラジンマイクロカプセル分散液に加えて、脂質膜を担持させた。これにより、細胞膜モデルとしてのリポソームの機械的強度を向上させ、合成高分子マイクロカプセルの生体適合性の向上を図った。この方法によれば、ポリアミド1mg当り250μgのDMPCが担持された。これに16-アントロイルオキシパルミチン酸を添加し、その蛍光偏光解消度の測定により、マイクロカプセルに担持された脂質膜は、リポソームと同様の二重層構造をとると考えられた。脂質が完全にマイクロカプセルの表面を覆ったとすると、脂質分子が1.5層の二重層膜を形成したことになる。ここへ下に示すケイ光プローブを有する合成糖ペプチド【S_0】と【S_5】を取り込ませ、レクチンの添加によるカプセル間の橋架けや、カプセル内での糖ペプチドの凝集を分光学的手法によって解析した。その結果、これらの系での糖ペプチドは、リポソーム系での糖ペプチドと類似の挙動を示し、マイクロカプセルの機能化に成功した。しかし、マイクロカプセルの表面を完全に脂質二重層膜で被覆できないこと、糖ペプチドは脂質膜にもポリアミド膜にも吸着・分配され、それぞれがレクチンと相互作用するなどの複雑性を示した。
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