研究概要 |
種々の有用植物とそれらの近縁野生種のオルガネラDNAの変異を分析し、その結果からそれぞれの種属内の系統関係と栽培種の起原を解明することが本研究の目的である。以下に、成果の概要を材料別に述べる。 1.コムギ・エギロプス属:葉緑体ゲノムの種内分化を知るため、例をAegilops triuncialisにとり、分布地全域から採集した26系統の葉緑体(ct)DNAの制限酵素分析を4酵素を用いて行った。その結果、Ae.triuncialisにはAe.caudataとAe.umbellulataの正逆交雑に由来する2型があること、及びコーカサスの一地方にAe.caudataと若干異なるctDNAをもつ変異集団が存在することがわかった。次に、ctDNAに分子的差異がみられないが細胞質の遺伝的特性は明瞭に異なる3群のAegilopsの種・系統についてミトコンドリア(mt)DNAの制限酵素分析を5酵素を用いて行った。その結果、各群内に明白なミトコンドリアゲノムの分化を認め、細胞質の遺伝的差異はすべて葉緑体とミトコンドリアの両ゲノムの分化で説明できるようになった。 2.エンバク属:19種のctDNAの制限酵素分析を8酵素を用いて行い、本属に5型の葉緑体ゲノムの分化を認めた。次に、【I】型葉緑体ゲノムを共有する15種についてmtDNAの制限酵素分析を行い、8型のミトコンドリアゲノムの存在を確認した。栽培種を含むすべての倍数種の細胞質は2倍種A.hirtula-A.wiestiiに起原したものと推定される結果を得た。 3.イネ属:Oryza sativaの2亜種indica(7系統)とjaponica(15系統)及びもう1つの栽培種O.glaberrima(8系統)のctDNAの制限酵素分析を行った。葉緑体ゲノムに関し、indicaとjaponicaはHind【III】とPst【I】,O.sativaとO.glaberrimaはEcoR【I】を用いることにより明確に区別できることが判明した。 4.バレイショ属:23種44系統のctDNAの制限酵素分析を用い、7型の葉緑体ゲノムの分化を認めた。
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