地表面における熱収支、水収支を長期間連続して観測し、地空間相互のエネルギー交換の実態を明らかとする事がこの研究の目的で、本年は2ヶ年計画の第1年目である。 今年度は観測地の整備や計測器の設置を行い、第1回の特定期間の強化観測を行った。購入した計測器のうち超音波風速計、水晶温度計、水晶露点計はそれぞれ2高度に設置し、放射温度計とレーザ屈折計は地面温度と地面近傍の熱的性質が求められるよう設置した。土壌水分計は水収支関連の既設測器の近くの地中に設置した。これらと既設の放射計、土中温度計、雨量計などを共に用い長期連続観測が行えるよう準備した。各計測器についての試験的観測の後、冬期に全ての測器を用いてエネルギー輸送を加えた強化観測を行った。その信号は新規購入のデータレコーダに記録した。 データ解析の結果、地表近くの気温・湿度の分布は相互に全く独立した変化をする。すなわち、日中気温が上昇しても晶度は逆に減少する現象がみられた。これは地表面からの水蒸気が地面凍結のため充分に補給されないと考えられる状態が発生すること、土中の水分は雨量に対応して増減するが、それによって土中の熱伝導率も変化し、熱収支に影響が予想されること、光の屈折はほぼ地表面近傍の温度勾配に対応するためレーザーを用いて温度勾配を求めることを試みたが他の要素の影響が混入していることを示唆する結果が得られたこと、渦粘性係数や渦拡散係数は安定度の関数としてある程度表わすことができるが、過去の国外の観測とは必ずしも一致しないことなどの問題が見出された。次年度はさらに良質のデータを加え、エネルギー輸送機構の実態を明らかとすると共に、輸送量のパラメータ化、熱収支・水収支のモデル化を可能とする結果を得ることを目標とする。
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