研究課題/領域番号 |
60420019
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松下 照男 九大, 工学部, 助教授 (90038084)
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研究分担者 |
豊田 直樹 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (50124607)
大城 桂作 九州大学, 工学部, 教授 (40038005)
岩熊 成卓 九州大学, 工学部, 助手 (30176531)
都甲 潔 九州大学, 工学部, 助手 (50136529)
山藤 馨 九州大学, 工学部, 教授 (90037721)
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キーワード | 超伝導体 / ピン止め / 臨界電流密度 / 巨視的ピン力密度 / 量子化磁束格子 / 飽和現象 / 脱飽和現象 |
研究概要 |
実用超伝導化合物の【Nb_3】Snに見られる巨視的ピン力密度の飽和現象及び、これよりも高磁界特性の優れた【V_3】Gaの脱飽和現象の機構を調べるため、本年は常伝導析出物をピン止め中心にもつNbTa,NbTiについて研究を行なった。その結果以下のことが明らかとなった。 (1)NbTaでは【Nb_2】N析出物の量を多くして行くと、巨視的ピン力密度は飽和せずに単調に増加するという脱飽和現象を示す。しかし逆に析出物の量を少なくして行ったときに期待される飽和現象はまだ得られていない。 (2)NbTiでは熱処理によってα-Ti析出相の量を多くして行くと飽和現象が観測された。この試料を冷間加工して析出物をリボン状にすると、巨視的ピン力密度は急に増加し、脱飽和となった。 (3)飽和領域にあるNbTiでは析出物の増加とともに量子化磁束格子の弾性は増加し、一方格子の降伏歪に比例する相互作用距離は減少し、格子の脆化が起った。この両者の変化が相殺して巨視的ピン力密度の飽和が生じた。 (4)脱飽和領域ではNbTa,NbTiのいずれにおいても量子化磁束格子の降伏歪はピン止め中心の強さによらず一定となり、格子の脆化がとまる。このため弾性の増加がそのまま巨視的ピン力密度の増加となって現われる。 以上の中で(3)は転位のみをピンにもつNbTaについて昨年度観測したことと定性的に一致している。このことと(1)(2)より、個々のピンの強さ(要素的ピン力)がある一定の値を越えることにより飽和現象から脱飽和現象へ移行するものと結論づけられる。なおNbTaとNbTiの特性の違いはG-Lパラメータκの違いによるものと思われる。(4)の結果より、脱飽和現象の場合には欠陥を多く含む量子化磁束格子の構造が強い要素的ピン力で安定化されているものと考えられる。したがってピン止め特性の違いはピンが格子の欠陥構造を安定に保てるかどうかによって決定される。
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