研究概要 |
1.中等度好熱菌B.Stearothermophilusのバリル tRNA合成酵素について,本来の基質ATPの発蛍光性誘導体である3′ーOーアントラニロイルATPが本酵素の基質となりうることを初めて示し,さらにこのATP誘導体と本酵素との結合を,蛍光変化を指標として,平衡論的に測定・解析し,次いでミクロストップトフロー装置を用いて高速反応速度論的に測定解析した. また本菌のリジルtRNA合成酵素について,Lーリジン及びその数種類の誘導体と本酵素とを混合したときに観察される蛋白質蛍光の変化が,これらリガンドと酵素との特異的な結合を反映するものであることを明らかにした. 2.サブユニット当り3個のメチオニン残基のメチル基を選択的に重水素化したストレプトミセスのズブチリシンインヒビター(SSI)を生産することに成功し,その溶液及び固体状態で重水素核NMRを測定し,メチオニン側鎖の内部運動状態を直接的に検出することができた. 特に固体状態では,水和により,Metー70,73の内部運動が発生すること,またズブチリシンBPN′との複合体においても,これらの側鎖が酵素との結合に関与していることの証拠を得た. 3.Rh,niveusのグルコアミラーゼのトリプトファン残基のNーブロモサクシンイミドによる化学修飾を,触媒活性を示さないpH 7.5において速度論的に研究した結果,活性部位に存在するトリプトファン残基は,pHに依存してその状態が微妙に変化することを示唆する証拠が得られた. また枯草菌液化型αーアミラーゼのカルボキシペプチダーゼYによる部分加水分解の実験より,C末端の数残基が可動性に富むこと,及びこの数残基を切断すると,触媒活性が約20%上昇することが知られた.
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