黒質刺激に応答する尾状核ニューロンの興奮はドーパミンD-2受容体を介するものであるか否かを、クロラロース麻酔ネコを用いて電気生理学的に検討した。D-2拮抗薬ドンペリドンのイオントホレーシス法による適用は27個の尾状核ニューロンのうち20個において黒質刺激誘発スパイクを有意に抑制した。D-2作用薬ブロモクリプチンおよびLY171555はこの尾状核ニューロンの自然発火数を増加させた。しかしD-2拮抗薬により抑制されないニューロンではD-2作用薬による発火数の増加はみられなかった。D-2作用薬によるこの発火数増加はドンペリドンまたはハロペリドールにより拮抗されたが、D-1拮抗薬であるSCH23390では影響されなかった。これらの結果は黒質刺激による尾状核ニューロンのスパイク発生はドーパミンD-2受容体を介することを示した。これまでの成績とも合せて、抑制性のD-1受容体と興奮性のD-2受容体が同一の尾状核ニューロンに共存することが判明したので、さらにこのドーパミンの興奮性および抑制性機構を解明するために細胞内記録による実験を行った。ラット尾状核からえられたスライス標本を人工脳脊髄液にて潅流した。ドーパミンの0.1〜1.0μMの低濃度適用は脱分極と細胞内の脱分極性パルスによる活動電位数の増加をもたらした。一部のニューロンではドーパミンにより自発発火が発生した。一方、ドーパミンの100〜500μMの高濃度では過分極をおこすか、または静止電位を変えなかったが、脱分極パルスによる活動電位の閾値の増加を伴った。これらのドーパミンの興奮性および抑制性反応はハロペリドールにより拮抗された。以上の成績は同一尾状核内に興奮性および抑制性の機能的に異なる2種類のドーパミン受容体が存在することを示すものである。
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