研究課題/領域番号 |
60440029
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高折 修二 京大, 医学部, 教授 (10025538)
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研究分担者 |
赤池 昭紀 京都大学, 医学部, 助手 (80135558)
笹 征史 京都大学, 医学部, 助教授 (20025654)
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キーワード | 尾状核 / ドーパミン / ドーパミン受容体 / ハロペリドール / ドンペリドン / 細胞内記録 |
研究概要 |
尾状核ニューロンにおいて、ドーパミンD-1受容体とD-2受容体が共存するか否か、また、これらの受容体を介して生じるドーパミンの抑制および興奮作用の作用機構を解明するために、ラットの摘出尾状核スライス標本を用いた電気生理実験を行なった。尾状核スライスは人工脳脊髄液灌流により維持し、ニューロン活動を細胞内記録することにより、ドーパミン受容体作動薬および拮抗薬の灌流投与時の尾状核ニューロンに対する作用を観察した。ドーパミンは 0.1〜1.0μΜの低濃度において、ニューロンに持続的脱分極をおこし、また自発的に発火活動を示すニューロンにおいては、その発火頻度を増加した。また、静止ニューロンにおいても、細胞内への脱分極パルスにより誘発される活動電位数を増加した。膜低抗および発火閾値には影響を与えなかった。一方、100〜500μΜの高濃度のドーパミン投与では、静止膜電位に著明な変化は生じなかったが、発火閾値が脱分極側にシフトすることにより、自発発火活動および細胞内への脱分極パルスによる発火が抑制された。同一ニューロンにおいて低濃度(1μΜ)および高濃度(100μΜ)のドーパミンを逐次投与すると、多くのニューロンにおいて、濃度に依存した興奮および抑制の二相性の作用が観察された。D-1およびD-2受容体拮抗薬のハロペリドールはドーパミンの興奮および抑制作用とともに抑制したが、高濃度のドーパミンの抑制作用に拮抗するには、低濃度ドーパミンの興奮作用を拮抗する場合の10倍の濃度を必要とした。D-2拮抗薬ドンペリドンはドーパミンの興奮作用に拮抗したが抑制作用には影響を与えなかった。D-1拮抗薬SCH23390はドーパミンの抑制作用に拮抗した。以上の成績は、脱分極作用を介する興奮性D-2受容体および発火閾値調節作用を介する抑制性D-1受容体が同一の尾状核ニューロン上に共存することを示るものである。
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