研究概要 |
(1)SV40oriをもつFcDNA,或はLTRをもつHANAcDNAをL,CHO細胞に導入し、夫々数十株のトランスフォーマントを接取した。夫々の細胞株で組込まれたcDNAの量は異っていたが、cDNA量と発現量との間には関係が見られなかった。残念ながらF,HANAの発現量は少なく、どのレベルの問題かを検討することとなった。 (2)mRNAの存在は確認されたが、感染系に比してその量は少なかった。次にSV40oriを組込んだcDNAをCOS細胞に注入して一過性の発現を観察したところ、F,HANA共充分の発現が見られた。さらに感染細胞から採取したmRNAをin vitro系で翻訳させると、電気泳動でNPの位置にHANAもFも泳動されることが確認された。以上のことから、(1)のトランスフォーマントの発現量の少なさは、転写段階のものであると結論された。以上の観察から以後の実験は一過性の発現を利用して行うことになった。 (3)Cタンパク質の機能がF,HANAの発現調節では無いことが相当確かな事になったが、本格的にその機能を解析する準備として、コンピューターで機能ドメインのアミノ酸配列を推定し、ペプチドの人工合成に着手した。 (4)HVJ粒子の外膜は、生体膜としての基本構造をもっており、細胞融合のモデルとして有効である。発芽直後の若い粒子の外膜の裏うち構造は、加齢と共に崩れてゆくことがわかっているが、本年度の研究で、生体膜融合を誘発させる条件を与えると、加齢粒子は容易に相互融合するが、若い粒子は融合に強い抵抗を示すことがわかった。また細胞工学的応用として人工リポゾームとウイルス粒子との融合条件の工夫が行われた。
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