研究概要 |
輸血などの治療を受けていない不応性貧血(RA)9例と,健常成人49例について赤血球フェリチン値を測定した. 溶血液の作製はWeydenらの方法ら準じ, フェリチンはIRMA法(Spac RIA Kit 第一ラジオアイソトープ社)およびRPHA法(山之内製薬)を用いて同一検体を同通にそれぞれ測定した. RA症例,健常人の赤血球フェリチンをカラム等電点電気泳動法を用いて検索した. 健常人の赤血球フェリチンはpI5.1とpI5.7との間にピーク認め, RPHA法ではpI5.2とpI5.6とにピークを持つ2峰性パターンをみた. 一方,RA症例では検討した3例の全例でpI5.6付近に塩基性フェリチンを示すピークを,そのうちの2例では健常成人よりさらに酸性側のpI4.9付近から酸性フェリチンを示すピークを認めた. 酸性フェリチンを認めなかった1例は3血球系統に形態異常を認めたものの,赤芽球系は低形成性でありFerro-Kineticsにおいて著しい造赤血球能の低下を示し,赤血球系の異常と赤血球内酸性フェリチンとの関連を考える上で示唆に富む症例と考えられた. 赤血球フェリチンのCon A結合性はRA症例,健常人ともに認められず,赤血球フェリチンの酸性化と血清フェリチンのそれとは異なることが示唆された. 以上の結果により,RAにおける赤血球フェリチンは,造赤血球能の異常を反映して増加しており,特に酸性フェリチンの多様なる変化が重要と考えられ,赤血球フェリチンの測定・分析は前白血病状態の診断に有用であることが示唆された. 酸性フェリチン増加の機序を明らかにする目的でシアル酸の含量を検索したが,その増量は認められなかった. さらに赤血球内フェリチン増加に赤血球内鉄の増加が関与しているか否かを検討したが,正常人のそれ以上に上昇は認められず, 赤血球フェリチン増加の機序解明は今後の問題でもある.
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