研究概要 |
1.脊髄漸増圧迫モデル動物の作製は, 家兎を用い後方あるいは前方進入による方法を試みた. (1)後方法;緩徐な後弯進行を安定した率で発生させるには, 胸腰椎移行部操作が最も適切であり, 手術時週齢の若い家兎ほど後弯角度は大きい傾向にあった. この群の後弯変形は, ほとんどすべての例で最大屈曲位の角度が中間位のそれより約5°大きく, 脊髄に対する圧迫は常に一定であるとは言えないと思われた. 20°〜30°の後弯変形(中間位)のまま50週以上経過した10例のうち麻痺を呈したものはなかったが, 脊髄誘発電位を測定すると, 術後60週30°(中間位)の1例に上行性下行性ともに第1電位の陽性化を認めた. 他の9例のうち, 弱刺激にて第1体位が多相化した例があった. 第2電位は10例中7例に弱刺激, 強刺激ともに多相化を認め, この程度は後弯角度の大きい程度かった. 組織学的には, 角度の強い例に後索の萎縮, 白質全域にわたる脱髄所見, 空洞変性等を認めたが, 全体的に変性は軽微であった. (2)前方法;腰椎椎間板切除と椎体前方の成長軟骨板の破壊を行ったが, 手術週齢の若い家兎ほどより大きな角度に達する傾向にあり, 6〜8週齢術後約6週にて25°〜30°に達した. この方法によると, 最大後弯獲得後は中間位と屈曲位での角度に差はなく, 得られた変形は, 後方法と異り脊髄に常に一定した圧迫因子として作用していると思われた. 長期経過観察と, 電気生理学的, 病理学的検討は今後の課題である. 2.L2/3間で脊椎を牽引した実験では, 牽引後閾値の3倍刺激による誘発電位において, 一過性の増大現象を呈したものがあった. この際の脊髄血流量は, 牽引後急激に10ml/min/100g以下まで減少し, 阻血状態を呈していた. この牽引部の病理組織標本(HE染色)には, 特に大きな変化を認めず, この増大現象は, 機械的損傷をうける以前に阻血に陥った脊髄に特有のものであると思われた.
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