目的:喉頭用超音波画像診断装置を用い、声帯振動についての多面的に基礎的検討を加える。また臨床的応用としては、喉頭癌の進展範囲の観察経皮的声帯注入法の外部モニター等に使用し、その評価を行う。 成績:各種起声時における声帯振動開始から定常状態に至るまでの過渡期の変化を、呼気流率を同時記録しながら観察した。その結果、硬起声では起声前に声門は閉鎖し、呼気流がない状態から急に声帯振動が始まることが観察された。それに対し、軟起声ではわずかに声門が開いた状態から徐々に呼気流が増加し声帯振動が始まることが観察された。また気息性起声では、起声前に声門は軟起声のときよりも大きく開大しており、呼気流も多い状態から、声門が徐々に狭くなり、呼気流も減少しつつ声帯振動が始まることが観察された。ここで、声帯振動が開始してから定常状態になるまでの振動周波数の変化を比較してみると、硬起声の場合が最もその変化が大きかった。また、軟起声及び硬起声において、振動開始時の呼気流率を比較したところ、声門間隙に差がないのにもかかわらず、気息性起声の方が呼気流率が高いことが観察された。 喉頭癌の進展範囲の観察について検討したところ、声帯癌の粘膜下進展度、前喉頭蓋間隙への進展度及び甲状軟骨の破壊の程度の評価に有用であった。また化学療法、放射線治療の効果判定に対する補助診断として有効であった。 経皮的声帯注入法の外部モニターとして応用した。まずイヌ摘出喉頭を用いた実験で、探触子の最適圧抵部位を決定し、刺入針先端の位置及びシリコン注入時の変化を確認した。この結果に基づき、声門閉鎖不全の4症例に臨床応用し良好な結果を得た。経皮的声帯注入法の最大の問題点である、注入部位を正確に把握できない、注入には相当の熟練を要すなどの欠点を補う有用な方法であった。
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