当教室では発声中の声帯遊離縁の振動動態を観察する方法として、超音波パルス法を用いたUltrasonoglottographyを1964年に開発し、発声機構を解明すべく検討を加えてきた。近年急速に進歩した超音波電子工学技術を背景に、更に精度を高め、諸機能を有する喉頭用超音波画像診断装置(ULGと略す)を新たに開発した。本装置は喉頭のBモード像をreal time下に描出することができる他、従来のU.G.G.と同様の機能、すなわちMモード像を得ることができる。Mモード法は高速振動体としての声帯運動をとらえるために超音波繰り返し周波数を2.5、5、10kHzの3段階可変とし、Mスピードは最高で、10.7msecとした。超音波の音速を考慮し、視野深度は最高で25mm以降を消去した。Mモードの位置決めはBモード画面上のカーソル線で設定し、声帯の任意の場所の運動が観察可能である。探触子は7.5MHzリニア電子走査プローブ大型のPLE-705S(有効視野幅57.4mm)と小型のIOE-702V(有効視野幅25mm)を用いた。観察記録系としてULG多機能モニター(X-Yモニター)を接続し、ポラロイド写真で記録する。本モニターは高速Mモード像を拡大観察でき、one sweep timeは20〜200msecの範囲で可変である。さらに声帯遊離縁および内部の微小な運動を観察可能にするため、目的とするエコーにゲートをかけその最大振幅をpulse position modulation表示する機能を有している。ゲート幅は0〜15mmの範囲で選択できる。4ーchannelあるのでMモード法の他に、超音波透過法やMモード変法、PGG、音声波形、呼気流率などを最大4個同時に記録できる。以上の装置を開発し、正常もしくは病的喉頭のBモード像を観察した。また声帯の細部たとえば上部、中部、下部の振動を観察することができ、おのおのは独自の振動パターンを有することが判明した。さらに種々の方法を同時記録することにより、声帯のより詳細な振動機構を解明することができた。
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