研究概要 |
本研究は、エックス線の生体に及ぼす影響のうちで特に重要であると考えられる突然変異の誘発、発癌および加令(老化)について、これらの原因を分子レベルで解析しようとするものである。したがって研究を実施する大前提としてエックス線照射装置が必須である。残念ながら、当放射線生物研究センターはエックス線装置を持たなかったので、本研究によって生物照射用装置の購入を申請した。幸いにして昭和60年10月末に昭和60年度科学研究費補助金交付の第二次内定を受けることができたので、直ちにメーカー側と打合せを行ない、昭和61年2月初めにエックス線照射装置を設置することができた。 今年度は、このエックス線発生装置について、種々の実験材料(プラスミドDNA,培養細胞,マウスなど)に最も適した照射条件を設定するために、エックス線管から照射台までの距離をさまざまに変えて線量率の測定を行い、それぞれの実験目的にかなった照射条件を決定した。この条件に従って、昭和61年度から本格的に生物材料を用いた実験を開始する。ただ、本研究課題に関して、生物材料を用いた研究を全くしなかった訳ではなく、他部局の好意でエックス線装置を使用させてもらって以下のような結果を得ている。 マウス胎児から樹立した培養細胞株にエックス線を照射すると、線量に応じて癌化したトランスホーマントのフォーカスが生じた。フォーカスに由来するクローンの染色体をGバンド法で調べると、6番染色体の末端部にタンデムにくり返すバンドが見られた。これらの染色体異常と細胞の癌化との関係について、今後更に研究を進める予定である。
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