悪性腫瘍に対する光線力学的治療法の開発

1986 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 60440111
• 研究機関: 東京医科大学
• 研究代表者: 早田 義博 東京医大, 医学部, 教授 (30074470)
• 研究分担者: 米山 一男 東京医科大学, 医学部外科, 助手 ; 河手 典彦 東京医科大学, 医学部外科, 助手 (70204740) ; 小中 千守 東京医科大学, 医学部外科, 助手 (70147180) ; 會沢 勝夫 東京医科大学, 医学部生理, 助教授 (40074645) ; 加藤 治文 東京医科大学, 医学部外科, 講師 (20074768)
• キーワード: HpD / 腫瘍親和性光感受性物質 / アルゴンダイレーザー / 光線力学的治療 / パルス波 / クロリン系物質

研究概要

悪性腫瘍に対するヘマトポルフィリン誘導体(HpD)とアルゴン・ダイ・レーザーによる光線力学的治療法(PDT)の開発及び自動化を目的とした。昭和57〜昭和60年までの基礎及び,臨床実験からPDTの早期肺癌への有効性,進行癌ではPDTを併用することによる拡大あるいは縮少手術の可能性を検討してきた(60年度報告)。以上の結果、レーザー光線の組織透過性の問題,HpDの腫瘍内分布の不均一性等が今後の課題として残された為、今年度は新しい励起光線としてのパルス波の応用及び新しい腫瘍親和性光感受性物質の開発を目的とした基礎実験を行った。1.パルス波の応用。パルス波を応用して組織透過性を改善しさらにPDTの自動化を計る為の基礎実験を行った。すなわち照射フィイバー先端から照射病巣までの距離をパルスレーザーを用いて計測する為の予備実験として、距離の異なる点に対して照射したパルス波をストリークカメラで捕えて時間分解測充し、光速を考慮して2点間の距離を計測した。しかし、今回の実験はファイバーを用いたものでないので、ファイバーを通じてパルス波を照射しうるようなシステムを開発する必要を認めた。2.HpDの組織内分布状態の観察。担癌マウスを使用し、HpDの組織内分布状態を螢光顕微鏡で観察した。静注によりHpDは腫瘍辺縁に生に集積し、一方腫瘍内に直接注入した場合には高濃度に集積するが周囲の正常組織にも集積してしまう結果となった。よりよい腫瘍内均一分布を得る為に投与方法の改善やHpDの代謝,排泄などの課題が残された。3.新しい腫瘍親和性光化学物質の開発。この目的のため、クロリン系物質の一種Mono-L-Aspartylchlorine6(NPe6)を合成した。今後、HpDとの効果の比較や毒性面の解析を通じて有効性を検討したい。

研究成果

• [文献書誌] Yoshihiro Hayata: 1986,Marinus Nijhoff Publisheres,Boston. (1986)
• [文献書誌] Yoshihiro Hayata: Science & Technology In Japan. 9Vol.5,No.1. 49-52 (1986)
• [文献書誌] Yoshihiro Hayata: Excerpta Medica Current Clinical Practice Series 40. (1986)
• [文献書誌] Yoshihiro Hayata: New Trends In The Treatment of Advanced Tumors Serano Symposia Review No.12. (1986)
• [文献書誌] Harubumi Kato: Lasers in the Life Sciences. 1(1). 13-27 (1986)
• [文献書誌] 加藤治文: 治療学. 2Vol.17,No.179-184 (1986)
• [文献書誌] 加藤治文: 肺癌. No.6. 142-152 (1986)
• [文献書誌] 加藤治文: 臨床胸部外科. Vol.6,No.4. 80-82 (1986)
• [文献書誌] 加藤治文: 日本外科学会雑誌 第87回 第9号. 988-991 (1986)
• [文献書誌] 加藤治文: レーザー学会研究会報告別冊. 15-20 (1986)
• [文献書誌] 加藤治文: オプトロニクス. No.3. 111-116 (1986)
• [文献書誌] 加藤治文: レーザー研究. Vol.14,No3. 43-54 (1986)
• [文献書誌] 監修 早田義博,編集 加藤治文: "レーザー腫瘍治療マニュアル" サイエンスフォーラム, 225 (1986)