研究概要 |
1.変換構造説の構造論的研究. 我々は, 変換構造説を構造論的に再構築した. その際, 我々はパターン刺激の構造と認知判断の対応づけに関して, 2原理, 2基準を設けた. これらの原理, 基準に基づいて, 認知判断の順序を変換構造によって予測する, 順序整合性の仮説および順序保存の仮説を導き出した. 2.変換構造説に関する実験的研究. (1)すでに順序整合性の仮説は実験的検証をえているので, 組合せパターンを使って, 順序保存の仮説の検討を目的とした実験が行なわれた. その結果, 仮説は実験的に支持された. なお, 副次的に組合せパターンについても順序整合性の仮説が実験的に支持されることが明らかになった. (2)パターン生成の研究が行なわれた. パターン生成のモデルが作られ, 実験結果の説明, およびパターン生成と創造性との関係が論じられた. 3.変換構造説の群論的研究. 本研究では, 群論を使って変換構造説を定式化する研究が開始された. その結果, 新しい定式化が得られたばかりでなく, 新しい考え方が生まれ, 新しい予測がなされることになった. 4.研究の評価と今後の研究. 我々は上で述べた構造論的に導かれた変換構造説は構造の認知とそれに対応する認知判断の形成に関する基本的理論を構成すると考える. これに対して, 群論的変換構造説は対象認知の根本的認知機構の研究に道を開く説と考えている. ただし, 後者の説に関しては現在, 研究を開始したはかりで, 理論を構想中である. 我々は, 対象認知の基本的理論を構成するにはこの両学説をもとに進展させる必要があると考える. 今後, 本研究の成果を重要な根拠として, この方向で研究を進め, 対象認知の基本的学説を構成し, 認知心理学の基礎固めに貢献したい.
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