研究概要 |
本年度は昨年度にひき続き、多変数非線形関数の(1)勾配,(2)ヘッセ行列とベクトルの積,(3)計算された関数値に含まれる丸め誤差の評価値,を関数評価に必要な手間の高々定数培の手間で求めるという「新原理ー高速(自動)微分法」を実現する処理系の作成を行った。この処理系はFORTRANプリプロセッサの形をり、関数を計算するプログラムを受けてこれを関数値とともに上記(1),(2),(3)を計算するプログラムに変換して出力するものである。昨年度中に完了した設計をもとに、我々は中型計算機(VAX-8600)上でC言語により処理系を記述した。この処理系を用いて、従来は遂行が困難であったところの「線形方程式系解法における枢軸選択やスケーリングが、解に含まれる丸め誤差へ及ぼす影響を調べる数値実験を行うことができた。この困難な実験を遂行することが可能であるということは、高速自動微分法の効力と有用性を実証するものである。 また、高速自動微分法の算法,処理系の概要,高速自動微分法のより精密な定式化を含めた総括を、日本OR学会,数値解析シンポジウム,研究集会「グラフ理論の数値計算への応用」,数理計画シポジウム、にて発表した。一方、小型計算機上のC言語翻訳系使用により、処理系が小型計算機上でも動作することを確認している。比較的複雑な関数を表す約五百行のプログラムを変換したところ、出力されるプログラムは約9千行になった。この変換後のプログラムの翻訳・実行は変換前のそれの約40倍となった。現在、この変換後のプログラムの翻訳・実行時間を短縮するために、処理系の改善を検討している。 文献調査により、海外でも多くの同種の研究が行われていることが判明したが、我々の作成したような処理系は未だ無い。我々はこの点で一歩リードしている。
|