1.問題となっている果樹病害糸状菌類について新しい自己生育阻害物質の探索を行い、オウトウ炭疽病菌が菌系の伸長を強く阻害する自己生育阻害活性物質を生産することを見出し、活性物質の培養・生産、抽出・分離およびその物理化学的性質について検討した。活性物質は胞子接種のマルツ培地を12日間以上振とう培養することにより生産され、酸性にした培養濾液から酢酸エチルで収量よく抽出された。この抽出物からシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより活性成分の1つを淡黄色結晶性物質として得た。このものは25μgで活性を示し塩化第2鉄反応陽性の未知フェノール物質と考えられた。目下本活性成分を多量に入手しその化学的性質を明らかにするとともに、構造化学および抗微生物活性について詳しい検討を行っている。 2.オウトウ灰星病菌から単離された自己生育阻害物質クロロモニリシン(【I】)の生合成について引き続き研究を行い、その生合成新中間体を明らかにすることができた。ブロモモニリシンの発酵生産液には【I】の生合成中間体と考えられる新物質モニリフェノン(【II】)が生産蓄積されていることを見出したので、それを単離し構造を決定した。さらに【II】からその重水素化物を調製し本菌による取り込み実験を行った結果、【II】の重水素化物はチ-クロロピンセリン(【III】)および【I】に有効に取り込まれることをマススペクトル法により明らかにした。従って、特異な構造を有する抗カビ物質【I】の生合成経路は新中間体【II】が加えられたことにより【II】→【III】→【I】と拡大された。また、ブロモモニリシン発酵液より微量のブロモキサントン類を単離したが、【II】→【III】の過程に存在すると推定された臭素化中間体は見出されなかった。
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