研究概要 |
薬理活性や生物活性を複合的に有する抗癌剤、いわゆる多機能性新抗癌剤の合成開発研究は未開拓であると言っても過言では無い。そこで、我々は独自の分子設計(イオウ化合物,特にチオール化合物の特性,核酸化学に関する多数の情報,ならびに化学構造と親水性・親油性・毒性相関などを基盤としたデザイン)に従って、各種チアゾリジン-2-チオンカルボン酸(アルドース還元酵素活性阻害及び弱い免疫賦活作用),ベンゾ〔C〕フェナンスリジンアルカロイド(核酸と電荷移動錯体形成),ニトロベンゾフラザン誘導体(タンパク質と共有結合),3-ニトロトリアゾール(3-NTRと略)誘導体(SH基とゆるやかに反応ならびに芳香族スルフォン化合物とスタッキング),2-ニトロイミダゾール(2-NIMと略)(抗菌活性),オリドニン(抗菌活性),ならびにピロリチジンアルカロイドなどに注目し、それらの新規化合物の合成開発と新たな抗癌活性開発に着手した。細胞及び動物レベルでの抗癌スクリーニング,放射線(【^(60)Co】Γ-線)照射下における低酸素性細胞増感活性スクリーニング,核酸レベルでの薬物との相互作用などを詳細に検討した。その結果、含ニトロチアゾリジン-2-チオンカルボン酸,ニトロベンゾフラザン,3-NTR及び2-NIM誘導体に強力な低酸素性細胞増感光果を認めた。特に3-NTR及び2-NIM新規誘導体は動物実験でも高い増感率を示し、かつ側鎖に酸素原子数を増加させれば毒性が軽減することなどが解明された。また、シソ科ジテルペン,オリドニンは単独で抗癌活性を示すばかりか、ミソニダゾールという増感剤の効果を増強することが明らかとなり、放射線癌治療にも利用できる可能性が示唆された。現在、抗癌性ピロリチジンアルカロイドの超簡便不斉全合成に成効しており、本アルカロイドの新規多機能化のデザインを鋭意実施検討している。
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