研究概要 |
Trypanosoma cruziのTrypomastigoteの表面構造について次のようなことが判明してきた。 1)認められるだけでも30を越す多数の蛋白抗原を細胞表面に露呈している。しかも特に有勢な抗原をもつわけではなく、これらの数多くの抗原が個々の原虫に異った量的パターンで出現するらしい。従って免疫動物の抗血清はいろいろなパターンで反応しているのが、生原虫を用いた間接螢光抗体法で認められ、過免疫マウス中でも血流中に原虫が生存できる機構の一つは、この表面構成抗原の多さと、その量的な多様性にあると考えられる。 2)病原力の差と表面構成分の差は、原虫をそのままで用いたSDS-PAGE,イミュノブロッティングでは識別できない。しかし生原虫をトリプシン処理した上清の濃縮液を用いると識別が可能になる。これはSDS-PAGE,イミュノブロッティンの両者に認められる。 3)SDS-PAGEにて強毒原虫のトリプシン処理上清は弱毒のものに比し多量の糖が含まれていることが明らかになってきている。従って病原力を決定するのは単なる2-3の蛋白成分の差でなく、グリコシレーションの量的な差にあるのではないかという感触を得ている。 4)キネトプラスト領域にはフィブロネクチンと特異的に結合する部位が認められるが、これは病原力には関係しない。他の発育ステージにもこれは認められるが、これらのステージのものが宿主細胞への親和性をもたないことから、一般に考えられているように宿主細胞の認識部位ではないと考えている。
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