研究概要 |
糖原病(GSD)1b型の特徴的所見とされる好中球機能異常をきたす機序について、生化学的に検討し、好中球機能異常とG6P translocase欠損との関連性を明らかにした。これはG6P translocaseの肝以外の組織での生理的意義を知る上でも重要なことである。対象;GSD1b型患者3例のうち2例は著明な低血糖,好中球減少,易感染性がみられ、肝のG6Ptranslocaseはほとんど検出出来ない重症例である。一方、症例3は成人例で好中球減少なく、肝G6P translocaseの残存活性を認める軽症例である。結果;ラテックスやフォルボールミリステートアセテート(PMA)で刺激後のhoxose monophosphate shunt(HMPS)活性はGSD1b型の重症型の症例1及び2では著明に低下していた。一方、軽症型の症例3やGSD1aでは正常であった。症例1および2での酸素消費量はザイモサン刺激時にコントロールの25.9-30.8%で、PMA刺激では32.4-42.6%であった。同様な傾向は【O_2】産生能や化学発光でもみられた。即ち、症例1及び2の【O_2】産生能はコントロールの22.6%(ザイモサン刺激),20.4%(PMA刺激)であり、化学発光は12%(ザイモサン刺激)であった。以上の結果は症例1及び2の好中球の貧食粒子などの刺激による活性酸素の産生が著明に低下している事を示している。考案;肝G6P translocase活性がほとんど見出せず、しかも臨床的に重篤な症例1,2では好中球のHMPS活性の著明な低下がみられ、translocaseの残存活性をもつ症例3では正常活性を示した。これらの知見はG6P translocaseが好中球に存在し機能している可能性を元唆しており、糖原病1b型に見る好中球減少や好中球機能異常を来す機序として、好球中G6P translocaseの欠損が強く考慮される。
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